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2009-06-14

椛と文

憑想魔の設定を考えるに当たって、少しSSを書いてみました。久しぶりなので、かなり
地の文が怪しいですが;
内容は椛と文の何気ない一日。本当に何気なさ過ぎて、展開が全くありません。
まあ短編集みたいに続けられればと思います。小悪魔と妖夢と橙の話も書ければいいな。

読みたいという方は、追記からどうぞ。
外の世界

「椛ぃ!」
「…?ああ、文か」

妖怪の山の、九天の滝の付近の小川で、若い鴉天狗、射命丸文の声が響き渡る。
白狼天狗椛は、その声を自慢の耳で聞き取ると、女性としては大柄な体をゆっくり
振り向かせ、声のするほうを向いた。そこにはやはり、馴染み深い文の姿があった。
少し、服がぼろぼろなのを見ると、弾幕ごっこに敗れてきたのだろうか。
何時もの事だ。椛はそう思って、少しだけ苦笑する。

「またこんなところで釣り?」
「…まあな。こうやって、若い連中に任して、落ち着いていたい」
「もう、老人みたいなことを言わないで」

文の言葉に、椛はもう一度苦笑する。彼女は天狗の中でも老年のほうだ。
妖怪の山で暮らした年と狼として生きていた年を足せば、大天狗の中でも年老いた人物と
同じくらい年を取っていると言われている。
もっとも、本人が曖昧にしか覚えていないから、実際のところはよくわかっていないの
だが。天狗の卵から生まれた文の両親が結婚する前からずっと妖怪の山にいたと言うから、
やはり年老いているのだろう。しかし、ずっと下っ端なのである。

「…本当はな、待機時間になったんだけど、にとりがいなくてね」
「ははぁん…。最近にとりは、白黒の魔法使いにお熱だからねぇ」
「ははは…あの人見知りのにとりがねぇ」

椛は笑う。別に構ってくれないことへの皮肉や悲しみなどはない。素直に喜んだ笑みだ。
こんな笑みを、文は何度も見たことがある。だけど、この笑顔は文しか知らない。
普段の椛は無口であまり表情の変化を見せることはない。それは、文が幼い頃の時に
関係している。
子供の頃から、文は椛と一緒に過していた。元々気が強く、高慢な性格が祟ってか、
あまり天狗の友達がいなかった文にとっては、椛と過した時間は楽しかった。
山での遊び方や釣り、蹴鞠、虫や山菜の取り方など、色々なことを仕事で忙しく、
世話をしてくれない親に代わって教えてもらった。
文の両親から見れば、椛は都合のいい世話係くらいにしか思っていなかっただろうが、
文にとって椛は、親当然の存在だったし、椛にとっても、文は娘のような存在だ。
文は着地すると、椛の隣に座って、頭を彼女の方に預けるように傾いた。
そして、暫く沈黙が続く。そして、椛が一度釣り竿を挙げ、餌を付け替えると同時に、
椛が口を開いた。

「…外は楽しい?」

外とは、天狗の社会の外、つまり妖怪の山の外の事を指す。
妖怪の山を出て、積極的に関わろうとする天狗は、文くらいなものだ。
他の天狗は人間達に取材をしても、それを記事にしようとはしない。
せいぜい根に葉もない噂を流して、人間をあざ笑うって終わりだ。
それに対して、文は、外の世界が好きだった。妖怪の山では見れない色んなものが
溢れていて、文はそれを自分の目で見て、調べて、そして触れるのが大好きだった。
スペルカードルールが出来たときも、天狗の中で最初に調べ、大々的に記事にしたのは
彼女だ。
だが、そんな彼女も目が肥えてきたのか、最近では外の世界に刺激を感じられなくなってしまった。最近は平和すぎるのだ。地底での冒険劇も、すぐに熱が冷めてしまった。

「…正直言うと、少し退屈。今日も刺激を求めて、弾幕勝負を挑んだけどねぇ…。
記事に出来るような弾幕はなかったし、油断していたら落とされちゃった」
「刺激かぁ…」
「変化が欲しいわねぇ…。じゃないと、記事に出来ることがなくなってしまうわ」
「変化かぁ…」

苛苛しているせいだろうか、椛の相槌が文には適当なものに聞こえ、少しだけむっとして椛を睨む。
すると、椛は表情をあまり崩さず、ただ少し苦笑しながら釣竿を撓らせ、
再び釣りをしながら言った。

「文。変わらないものなんて無いよ」
「…?」
「私も、文も、そこに生えている草や花も。空も大地も、一日たりとも同じ姿だったことなんて無いよ」
「…ううん…」

椛の突然の言葉に、文は腕を組みながら頭の上に疑問符を浮かべる。そんな彼女に椛は
少し眉を八の字にしながら苦笑する。

「文には難しかったかな」
「…子ども扱いしないで!」
「私にとって、文は何時までも子供だよ」
「むぅ…」

何も言い返せなかった。長年の付き合いで、文は椛に勝てたことがない。
いつも、飄々とした口調で言い包まれてしまう。でも、それが不思議と悪い気分にはならなかった。
椛は、自分に色々と伝えたがっている。そう思って、文は椛の言葉をずっと聴いてきた。

「椛の言う事はわかるわよ。でも、それが刺激になるとは限らないでしょう」
「はは、まあそうかもね」
「椛は意地悪だわ」
「意地悪かなぁ」
「そうよ」
「そうかなぁ」

椛は静かに文の頭に自分の手を乗せる。そしてゆっくり、左右に撫でてやる。
文は少し顔をしかめたが、すぐに満更でもないという表情を浮かべて身を椛に寄せた。

「…椛も、外の世界に行きましょうよ。こんなところ、息苦しいだけじゃない」
「そうかなぁ…。私はそれなりに、気に入っているんだけど」
「でも、ずっと下っ端よ?」
「関係ないさ。こうやって、川辺で文と一緒にいられれば」
「…!は、恥ずかしい事をさらっと言わないで!」

椛の言葉に文は顔を真っ赤に染めながら彼女から離れた。よほど恥ずかしかったのだろう。その様子が少しおかしかったのか、椛はもう一度笑みを浮かべた。優しい笑みだ。
その笑みを見て、文は少し眉をひそめながら、椛の頬に手を当てていった。

「…その笑顔、皆に見せてあげればいいのに」
「…私の笑顔なんて、不細工で見せられないさ。目つきも悪いしね」
「あら、じゃあ私には見せてもいいの?」
「それは…ううん…困ったな、そう言われると返す言葉がないな」

予想外だったのか、文の言葉に椛は返答に困り、頭を撫でながら本当に困ったような表情を浮かべていた。それに対し、勝ち誇ったように文はにやけた表情を浮かべた。その後、また頭を椛の方に預ける。

「ねぇ、行こうよ」
「…」
「…」

椛は答えない。ただ苦笑するだけだった。それがつまり、返答なので。
いつものことだ。文は気にしない。
無理に外に出そうとは思わない。無理に出したところで、つまらないだけだから。
椛には、外の世界を楽しんでもらいたい。そう思っているから、文はこれ以上は
言わなかった。だけど、本当は寂しかった。そんな表情が浮かんでいたのか、
椛は文の頭をあいていた腕で優しく抱く。

「…あ、掛かってるわよ」
「お、本当だ」

と、ふと文は竿が撓っているのを見て、椛に知らせる。椛は片手で軽々と釣竿を振り上げると、その糸の先にはしっかりと山女が掛かっていた。籠の中のを含めて、これで4匹。
椛は釣り針から山女を解放すると、籠の中に入れて、文に見せながら言った。

「良いのが釣れた。一緒に食べようか」
「…いいわねぇ。じゃあ、着替えついでに私もお酒を持ってきちゃおうかな」
「私はあまりお酒飲めないんだけどなぁ」
「いいじゃない、こんなときくらい」

麗らかな日。弾幕で敗れて、取材はうまく行かなかったけれど、悪くない日。
何時かこんな中で、椛と一緒に、幻想郷中を飛び回って見たいと、文は思った。
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theme : 東方プロジェクト
genre : ゲーム

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